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FFヒーターの取り付けと気密性

このブログも、FFヒーターの話題でアクセスがどんどん上がっていますよ。自作でFFヒーターを取り付ける人が増えているんですね。良いことだと思うのだぁ!

排気管付近の気密性に神経を尖らせるな!

Facebookなどのキャンピングカーのグループへの投稿を見ていると、自作する人に排気管の気密性にこだっている人が散見されますな。

しかし、ベバスト本家の取り付けマニュアルには、本体の台座のゴムパッキンだけで十分で、コーキングは不要と書かれているんだ。
実際問題として、本体台座付近の気密性をコーキング材で高めたとしても、自動車ってのは室内の空気を外へ出す穴がたくさん開いているので、そっちからの流入が大きくなるので、FFヒーター本体をコーキングしてもあまり意味がない。また、FFヒーターの排気ガスの圧力は低いので、ゴムパッキンを超えて入ってくるわけがない。
むしろ、コーキング剤でパッキンが劣化することの方が怖いかもしれない。マニュアルでは、パッキンは二年くらいで交換せよ、と書かれているので、コーキングしてしまって外しにくい状態にするよりは、シーズン前に目測で点検できるようにしておいた方がいいのだ。

そんでもって、本体の気密性よりも、ここで何度も書いているけど排気管の取り回しの方が重要だ。本家のマニュアルにも、機密性に関しては1行程度の解説で、排気管の取り回しについては数ページ渡って厳しく基準が書かれている。

最も危ないのは結露による排気効率の低下だ。

皆さん、注意してね。

ZOOM社に取材に行った!

デュアルADコンバーター&32bitフロートのレコーダーが凄すぎたので、メーカの開発者にインタビューしてきたんだ。詳細はProNewsでレポートするけど、日本メーカーも元気で冒険的で、凄かった!
いわゆるメーカー開発者というと作業服を着ているイメージだったけど、ZOOM社の開発者はお洒落、イケメン。

頭は良いし、ユーザーに凄い物を届けるぜ、という意気込みがすごい。
特にF6というレコーダーは、とにかく小さく、頑丈で、電池長持ち、圧倒的な高音質。異次元の使い勝手。

ZOOMのFシリーズは、地球上のあらゆる環境で使えるというコンセプトだそうだ。その中でもF6は、いっちょやったるぜ! という意気込みの、実質的なフラッグシップレコーダーだった。

いやぁ、レベル調整が必要ないというのは、ほんとうにすごいことだなぁ。

著者インタビューを受けました。

玄光社から出版した『映像制作の現場にすぐに役立つ 録音ハンドブック』の著者インタビューを受けました。
作家の今一生さんのYouTubeチャンネルです。

どんな本か、漫才のようなやりとりで解説しています。

元々塾講師を8年間も専業でやっていたので、喋るのは得意です。
ご堪能ください。

F6で映画のロケに参加したぞ

先週から6日間の映画ロケ。
録音機材はZOOM F6を新調。
6日間で160ページ弱という非常に過酷なスケジュールだったので、小さくて軽いF6を使うことにしたんだ。
しかも、32bitフロート録音なので、マイクボリュームをほとんど触らなくていいのが非常に助かったなぁ。

ZOOM F6をスマホで操作

F6はこれまでのレコーダーの概念を変える!

F6は非常に小さいので、実は操作が面倒なんだ。
ところが、非常に革新的な操作方法を取り入れていて、ほとんど触らずに高音質で録音することができる。
まだまだ操作方法は進化させるべき部分もあるんだけど、それでも、かなり使いやすい。
ただ、初めて映画の録音をするって場合には、まぁ、F6にお任せでというのが、ちょっと難しいかもしれない。

F6はボリュームのつまみ(ノブ)が、トリム(入力ゲイン)とフェーダーを操作しないといけないんだけど、これは面白くて、録画中はノブがフェーダー、スタンバイ中はトリムになるという画期的な機能が搭載されている。実は、映画の現場で、この機能のことを知らずに使っていて、なぜかトリムが下がってしまって困る場面が多々あったんだ。ロケが終わってから、上記の機能があることに気づいたんだよね。

具体的な操作で言うと、リハーサル中にノブを回してレベル調整をする。そして本番で録音ボタンを押したら(ノブがフェーダーに変わる)、その後でノブを下げておくと各チャンネルのファイルにはトリム調整された状態の音が記録されて、ミックスファイルにはフェーダーを絞ったチャンネルは入らない。
どういうことかと言うと、ガンマイクとピンマイクを併用するとき、ミックスにはガンだけ記録させて、ピンマイクは予備として別ファイルに記録することができる。逆でもいい。
こうすることで、複数のマイクを使うときの干渉防止や予備音声を確保することができるわけだ。まぁ、今回のロケでは、それができていないシーンもあったんだけど、これは非常に使いやすい。

本来は外部フェーダーを使えば、もっと簡単に上記のことができるんだけど、小さなF6だけでも、同じことができるのは素晴らしい。

ちゃんと録音するにはスマホ連携が必須

さて、F6の最大の欠点は画面が小さく、操作は4つの小さなボタンだけ。これは非常に不便! と言うか、全然ダメ。使いにくいぞ。

そこで別売のDTA-1(Bluetoothユニット)を付けて、スマホと連動するのが必須だぞ。まぁ、映画ではシーン番号カット番号トラック番号をレコーダーに記録するので、スマホがないと、そういったファイル名の変更に時間がかかりすぎるのだ。
テレビなどでシーン番号を付けなくてもいい場合には、スマホ連動は必要ないかもしれない。でも、小さなノブとボタンだけボリューム調整したり、各種の設定を確認するのは効率が悪い。

小生は、古いiPhone 6Plusをスマホ連携専用にしている。専用アプリを起動したままで、まぁ15時間は余裕で操作可能。スマホの台を用意した方が楽だろうなぁ。

ソニーのLバッテリー(970など)で30時間

バッテリーはソニーLバッテリーが使えて、なんと30時間以上動く。
1日に15時間くらい点けっぱなしでも、残量が50%以上。
これは非常に楽ですな。

映画のような長時間の撮影でも、バッテリーは2個持っていれば十分。アルカリ単三電池4本で4時間以上動くので、バッテリーが空になっても、まぁ、なんとかなるし。
長期間のロケでも、宿でバッテリーを充電しなくてもいいかもしれない。屋外でなければ撮影中に片方を充電しておけば、連日の撮影でも大丈夫だろう。
ロケ先から帰ってからの宿での充電は、結構ストレスになるので、これから開放されるのはありがたい。

32bitフロート録音は驚異的!

さて、なんと言っても32bitフロート録音がすごい。今までだと、役者が急に大声を出すとレベルオーバーしてしまうのだが、32bitフロートだと、レベルオーバーしないと言うか、普通のレコーダーのレベルメーターが2倍になった感じで、-12dB前後で普通の声を狙ったボリュームのまま、大声では、それをそのまま記録できちゃう。普通のレコーダーが平屋だとするとF6は2階建って感じだ。

しかも、S/N比が非常に良いので、実はボリュームを真ん中にしておけば、とりあえずなんとかなっちゃうなぁ。もちろん、編集時にレベル調整をしなくちゃいけなくなるけどね。失敗することはないと思う。
その一方で、32bitフロート録音の場合、マイク性能がいいものを使うべきだろう。具体的に言うと音圧のダイナミックレンジが広いマイクがいい。わかりやすく言えば、安いマイクは、大声が入るとマイク自体が音割れしてしまう。レコーダーには余裕があっても、マイクが大きな音を拾えなければ、結果的にレベルオーバーになってしまう。
そう言う意味では、無線式ピンマイクは大声で音が割れやすいぞ。特にデジタル式マイクは、簡単に音が割れてしまうので、注意が必要だ。

F6は超おすすめ!

さて、今回の映画ロケで使った感想としては、F6は絶対におすすめ!
軽くて長時間運用で、32bitフロート録音、とっても便利だ。まぁ、本当はMAが終わってみないと本当に良いとは言い切れないんだけど、まぁ、すごいよ、F6。

生活音とH3-VR

生活音を録音するというのは、結構難しいのです。
自然な音で録るには、マイクの設置をちゃんとしないといけない。
ショットガンマイクだと、一定方向の音だけしか録音できないので、部屋の隅に設置するなど、工夫が必要です。

でもね、H3-VRなら、部屋の真ん中に置けばいい。
それだけ。VRマイクは、面白いね。

Wireless GoのアクセサリーInterview Goが良い

Wireless GoのアクセサリーInterview Go(インタビューマイクにするキット)がかなりいいですね。

Wireless Goを先端に付けるグリップとウインドシールドのセットなのですが、ハンドノイズも普通のインタビューマイクと変わらないし、いや、むしろ小さく、SM63(インタビューマイク)と比べても、実用上は問題ないです。

SM63の方が感度が低い分だけ周囲の音が入らないのですが、ほとんど変わらないかな。本当はマイクゲインがあるともっと音質を追い込めると思うのですが、まぁ、仕方なし。
大声だと送受信機でレベルオーバーになるのですが、リミッターが優秀なのか、自然な音に収めてくれます。
本当にうるさい場所ではまだテストしていませんが、普通の場所であれば問題ないと思います。

唯一の欠点は、送信機をグリップから外さないと電源のオンオフができないことかな。

H3-VR関連だぜ

録音のプロとしてH3-VRを使ってきたので、久しぶりにレビューを足してみよう。というか、H3-VRのアクセスが多いので、それにお応えします。

音質・感度とも最高

まず、音質と感度だが、非常にいい。マイクの電気ノイズ(ホワイトノイズ)は皆無で、感度も非常にいい。プロの三味線の演奏を録音したことがあるが、微妙な皮の響き、サワリの音(弦の倍音を強調する機構)もバッチリだった。同時に端唄の歌声も非常によく録れた。

つまり、マイクの性能がいいということである。ただ、マイクの性能というのは、カメラのレンズ選びに似ていて、万能ということはない。例えば、このVRマイクで遠くの音だけに的を絞って録ることは難しいし、部屋の残響が大きい場合には、立体感は損なわれてくる(音が周囲から回ってくるから)。ただし、後で説明するが、再生アプリで音のフォーカス位置を変えられるので、これは画期的だ(後述)。

ボディーが非常に可愛いので、ステージ上に置いても映像の邪魔にならない。これもこのマイクのメリットである。

会議で録音するのにもいい。完全な無指向性なので、どこからの音も同じ音質で録れるからだ。

立体録音の性能も非常に良い

さて。気になる立体感だが、実は何で聞くかで体感の立体感は異なってくる。これは数十万円のマイクであっても同じだ。

このマイクにはジャイロが組み込まれていて、マイクの角度も音声ファイルに記録されている。つまり、マイクのセッティングが非常に楽で、適当に設置しても、再生時には正しい角度(地面との角度)で聞くことができる。具体的に言えば、ジンバル付きのカメラ(例えばOSMOなど)と同じで、マイクがどの角度であっても、音は水平を保つのだ。もし、ジャイロがなければ、マイクを斜めにして録音すると、再生時にも音が斜め方向から聞こえてきてしまう。
人間の耳の形のVRマイクを斜めにしてしまったら、後処理が大変なことになってしまう。つまり、他のVRマイクの場合には、完全な水平を保って録音しなければならないということで、これは録音現場では時間がかかる原因になる。

立体音響の性能も非常に良い

さて、実際の音だが、H3-VR-VRにヘッドホンを接続した時に、ステレオ音声かバイノーラル 音声かを選ぶことができる。また、パソコン上では再生アプリで、同じようにステレオかバイノーラルかが選べるし、ファイル書き出しでも、同じくステレオかバイノーラルかを選べる。

バイノーラルはヘッドホン(VRヘッドホンならベスト)で立体音響をきく技術だが、H3-VR-VRは非常に良好なバイノーラル音声で録音できる。H3-VR-VRは再生時にもジャイロが働くので、例えばH3-VR-VRを頭の上に置けば、顔の向きに応じて音の向きも変わる。つまり、下を向けば下の音、振り向けば後ろの音というようにリアルタイムに変化する。高価なVRヘッドセットが無くても立体音響がH3-VRで楽しめるのだ。

一方のステレオ音声だが、これはスピーカーで聞く場合の音声形式となる。こちらは2つのスピーカーで立体音響をシュミレートするもので、もちろん、後ろからの音は後ろっぽい音になる。

H3-VR-VRのファイルを5.1ch音声へ変換すれば、当然のことながら後ろの音は後ろから聞こえてくる。5.1chへの変換は映画のサウンドで使われるわけだが、映画の現場でH3-VR-VRで録音するには、マイクをどう隠すかなど、課題が大きい。これはH3-VR-VRに限った場合ではない。一般的にはほとんど使われないだろう。

VRカメラとの連携

リコーのThetaなどのVRカメラとの連携も楽だ。標準でVRカメラに取り付けるマイクアダプターが付属していて、VRカメラと連携して録音することができる。つまり、カメラとマイクの向きや角度が固定される。これを専用アプリで立体音響ファイルとVR動画を合成することで、VRヘッドセットやスマホ+ヘッドホンによって、顔の向きに応じて映像と音声が移動する。

余談がだ、別売のDA-1というBluetoothユニットを使うと、遠隔からH3-VRをコントロールすることができる。音声は送られて来ないのが残念だが、録音レベル調整や録音の開始停止、再生開始などができる。レベルメーターやカメラの角度も表示される。音は別途に安いBluetooth送信機と受信機(共に2000円弱)で送ればいいので、遠隔録音ができる。

専用アプリは便利だ

さて、H3-VR用の再生編集アプリは非常に便利だ。適当な向きで録音した立体音声を再生時に好きな向きに変えて聞くことができる。つまり、音のフォーカスを変えられるのだ。
例えば、円卓で会議をしている場合、喋っている人にフォーカスを変えて聞くことができるのだ。ただし、後ろの人の声が聞こえなくなるのではなく、フォーカスした人の声がオン(はっきりとした音)になり、後ろの人はオフ(遠くに聞こえる)ようになる。

まとめ

2020年9月現在、2万円代で買える。これは素晴らしい。Zoom H8というレコーダーが発売になったが、これ用にVRマイクも発売されている。おそらくH3-VR-VRと同等の性能だと思う。

現在のところ、これほど簡単で高音質のVRマイク(レコーダー)は他にないと思う。

映画録音技術の書籍用サンプル短編映画の台本

玄光社から出す映画録音技術の本のサンプル動画の台本を書いたんだ。
ツールはO’s Editor。脚本家御用達のワープロアプリだ。

これが暫定の台本。
さて、ここから徐々に台本の仕上げにはいっていくよ。