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STAXヘッドホンの使用感(裏技)

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STAXヘッドホン(SR-L500MK2)で色々聴いているんだ。
色々わかってきた。

JAZZはイヤーパッドを浮かせて隙間を作れ

ウッドベースがはっきりしているJAZZの生演奏を聴く時には、イヤーパッドを浮かせて隙間を広めにすると、ベース音が非常に強く明瞭になる。密閉が強いと空気圧で薄膜振動板が十分に動かないんだな。

SR-L500MK2のイヤーパッド。改良すればもっと音が良くなる。

ヘッドホンを持ち上げて完全に浮かせるくらいでちょうど良い感じだ。振動板の中心を耳の穴よりも前方(顔の正面方向)へずらすと、より低音が良くなる。これはボリュームにも関係があって、大きめに音を出しているときに、より顕著に変化する。
ただ、音源によっても感じ方が違う。というか、レコーディングでの低音の収録の仕方にも関わっていると思う。つまり、どんなマイクで録っているのか、音の編集時にどんな処理をしているのかでも違いがあるので、低音の収録状態のいい音源でないとわからないかもしれない。

イヤーパッドの改良を考えている

何れにせよ、イヤーパッドに隙間がある方が、音像の広がりも低音も良くなるので、イヤーパッドの改良をした方がいい。まぁ、使い込んでイヤーパッドがへたってくれば同じ事なのだが、仕事で使っているので、イヤーパッドは定期的に交換することになる。その都度、音質が変わられても困るわけだ。

何れにせよ、音質(周波数特性)が調整されたスタジオモニターと比較しながら、最適なイヤーパッドの調整をしていきたい。

STAXヘッドホンで執筆環境が変わった

執筆業の他に、映像制作会社を経営しているんだけど、そちらで映画の音の仕上げ用に、STAX社の馬鹿高いヘッドホンシステム(SRM-D10と SR-L500MK2)を導入した。販売価格で15万円(実際にはカードによる5%還元やメーカーのキャッシュバックなどがあって13万円で購入)という、バカバカしいヘッドホンなんだよね、

聴き疲れなのない音の世界

音に関しては、映画の音を作り上げる仕事なので、まぁ、僕はプロですね。万人にわかりやすい良い音を作るのが仕事。
そこで、今回のSTAX社のヘッドホンを仕事用に導入。まぁ、実は持続化給付金が入ったので設備投資ということね。

使い始めてほぼ一週間かな。これで2本の映画の仕上げを行なったんだ。1日に10時間以上もこれでをかけっぱなしで音を聞いている。
聴き疲ればないのが一番のポイント。そして、もちろん、音もいい。音がいいというのは難しいのだけれど、僕ら音の仕事をしている場合には、味付けされてない、原音に忠実な音を『良い音』と言っている。
そして、解像力も重要。これは大きな音が鳴っている影にある小さな音を聞き分けられるかどうか。映画では、撮影現場の色々な騒音が入ってくる。仕上げでは、それを綺麗に消す作業があって、これを行うには『良い音』のヘッドホンが必要なんだ。

一日中、音楽を聴きっぱなしも

そして、執筆作業の時には、80年代の洋楽やJAZZなどを聴いている。STAX社のヘッドホンで聴いていると、仕事(執筆)に集中することができるんだ。
今日も、WEBニュースの原稿を入稿したんだけど、このヘッドホンで音楽を聴きながらだと作業効率が非常に良い。

なぜかな? 余計な刺激(耳を刺すような音)がなく、自然な音の世界に包まれる体折ろうなぁ。

執筆する人は良い音の環境を用意すると良い

さて、改めて執筆のことを考えてみると、とにかく集中することが必要だ。テレビの音って、実は刺激的で、ぼーっと見ている人を振り向かせるために色々な技を使っている。だから、執筆中にテレビが点いていると、集中力を削がれるんだ。

なので、皆さんも執筆時の音をどうするかお考えいただくと良いと思います。

STAXの入門版:SRS-002。定価45000円

STAXはどれも高価なんだけど、入門編はSRS-002。アマゾンで39800円。これにかけ心地を向上させる密閉カバー/イヤーチップセットSTAX CES-A1も購入すると、幸せな執筆環境が訪れるはず。

STAX SRM-D10 SR-L500MK2を映画録音部がレビューしてみる(使用2日目)

新たな映像音響を考えるのに、STAXのドライバー(静電薄膜で音を出す専用のアンプ)を内蔵したSRM-D10と、STAXの中では中級になるヘッドホン(イヤースピーカー)のSR-L500MK2を買ったんだ。何が普通のヘッドホンと違うかというと、圧倒的な解像力と音源に忠実な音の再現性にある。その辺りを映画録音部の耳と経験でレビューしてみるぞ。

STAX SR-L500MK2:プロの現場で使える高い解像度とフラットな再現性。
STAX:SRM-D10 STAXのヘッドホンを駆動するドライバーとデジタル入力とアナログ入力がある。バッテリー内蔵で、出先でもSTAXの音が聴ける。ボリュームと入力切替しかないシンプrな構造だ。アルミの重厚なボディーで部品も美しい。ただし、携帯用としては巨大で重たい。

まずは視聴環境から

普段は仕事で、ソニーのMDR-CD900STというスタジオヘッドホンを改良したヘッドホンを使っている。このヘッドホンは、音楽や映画の現場で定番のもので、高い解像力と再現性を持っている。つまり、プロの音作りでは、多くの技術者やクリエーターがこのヘッドホンで音質のチェックをしている。だから、このヘッドホンで聞いた音が、プロが作った音だと言っても過言ではない。ただ、チューニングしていな状態では、スタジオスピーカーの解像力に及ばないので、僕は改良してスタジオスピーカーに近づけて使うのだ。

要するに、僕らプロの評価基準は、スタジオのモニタースピーカー(標準スピーカー)と同じように聞こえるかどうかなんだ。
心地よいとか色気があるとか、そんなことは、正直、あまり関係がない。味付けされずに、収録されている全ての音が正直に出ているかが重要だ。こういったフラットな音に慣れてくると、味付けされた音が汚く聞こえてくるんだから不思議なんだけどね。

STAXをレビューしよう

さて、今回導入したSTAXのヘッドホンだが、オーディオマニアの中でも評価が高い。ネットでも多くのレビューが上がっている。プロでは音楽系のクリエーターが使うこともある。
さて、今回は、音のプロとしてSTAXをレビューしてみたい。一般的なオーディマニアの評価とは違うかもしれない。

音のプロとして、まず感じるのは、本当に音の解像力が高いこと。そして、苦手な音域(周波数)がないということだ。つまり、音楽で言えばドラムやベースの低音域からシンバルの高音域まではっきりと聞こえてくる。僕らのような音の仕事をしている場合、こういった特性が必要になる。実は、プロの音響スタジオでは、スピーカーから出ている音が、全音域でフラットに出るように機材や部屋を調整する。そのために専用の機器で観測しているんだ。写真でモニターをキャリブレーションするのと同じだ。

そこでSTAXを前述したMDR-CD900STと比較するとどうか。実は、ほとんど変わらないというのが結論。もちろん、STAXの方が若干だが上だろう。その差は、どんなボリュームでも同じ再現性を維持していることにある。
ちなみに、一般的なヘッドホンは、低音や高音が強めに出るように作られていて、そういった味付けされたヘッドホンでは、僕らは仕事にならないのだ。

普通のヘッドホンは、音質がボリュームで変わってしまう

オーディオマニアの評価では、あまりボリュームについて語られていない気がする。実は、音響機器というのは音量によって聞こえる周波数特性が変化する。お手持ちのヘッドホンで、音量を下げていってもらうとわかると思う。低音が先に聞こえなくなっていくだろう。高音も同じように痩せていくと思う。
これは、磁力で振動板を動かすダイナミック式のヘッドホンの宿命だろう。コイルを振動させるため、小さな出力だと十分に動かないためだと思う。

ボリュームの違いで音質が変わって聞こえるのは、人間の耳にも問題がある。加齢とともに高音も低音も聞こえなくなってくる。これは宿命だ。ハイレゾと言っても、高音はそもそも加齢で聞こえないので、意味があるのか、ちょっと疑問に思う。それでも、聞こえにくい周波数帯は、ボリュームを上げて確認するという手段があって、我々は低音や高音については、音質を確認するためにボリュームを変えて自分にも聞こえるようにしている。最終的なバランスは数値で決めるようなこともある。もうちょっと言うと、自分の耳に合わせて音響機器の出力特性を変えないと、本当は正しい(原音と同じ)音に聞こえないのだ。オーディオマニアは、この辺りをどう考えているのだろう?
一方、我々は、測定器でフラットな音を作って、その音に耳を合わせる努力をしているんだ。

小さな音で聴くと性能がわかる

さて、人間の耳のことは別にして、前述のように音響機器の多くは、音質がボリュームで変化してしまうので、ヘッドホンの能力を簡単に調べるにはボリュームを下げればいい。ボリュームを下げても同じように聞こえるヘッドホンは性能がいいと判断できる。別の言い方をすると、ダイナミックレンジが広いかどうかというのと同じだ。クラシック音楽のように非常に小さな音が収録されている音源では、ボリュームを下げたのと同じで、ダメなヘッドホンは小さな音が先に消えていってしまう。

こういったダイナミックレンジは、前述のようにボリュームを下げたり上げたりした時に音質が変わるかどうかで判別できる。ここはアンプの性能にも依存してくるので難しいのだけれど、小さくしても全ての音が同じように聞こえて、ボリューム上げてうるさいくらいにしても、同じように音質が変わらないヘッドホンが優秀だと言うことだ。

STAX:はっきりとした低音と広がりのある音場

さて、STAXのSR-L500MK2だが、本当にフラットでいい解像力だ。STAXの一般的な評価では、低音があまり強くなく色気がないというようなレビューが多いように思う。
いやいや、低音もちゃんと出ている。というか、きちんと調整されたスタジオスピーカーと同じだと思っていい。ただ、スピーカーの場合では低音はウーハーから出る体全体で感じる波動があるから、それを加味すれば低音が足りないというのはもっともな話だ。しかし、それはヘッドホンで聴くなら仕方ない。それを低音を持ち上げて耳で聴かせると原音からかけ離れてしまう。

そういう意味では、STAXは非常に小さい音で聴いていても、全ての音がきちんと聞こえてくる。これは仕事をする上でも非常にありがたい。大きな音で聞き続けると耳が疲れるのだが、それがかなり回避できそうだ。

SR-L500MK2の使用感について

さて、やっとSR-L500MK2とSRM-D10の評価に移ろう。どのボリュームでも、非常にフラットで音質が変わらない。スタジオモニターと同じ音質だと言ってもいい。我々は1日に8時間はヘッドホンで聴いているのだが、そのあたりどうなのか。
SR-L500MK2は非常に重たいので、正直いうと首が疲れるかもしれない。イヤーパッドは非常に大きく、耳だけでなく周辺も全部覆う。ヘッドバンドの張力が強く、締め付けられている感じ。取り付け位置をうまく調整しないと頭が痛くなる。

SR-L500MK2のヘッドバンドの調整部分。最適な位置が見つかると長時間の使用でも痛くならない。

取り付け範囲(上下位置)は、かなり広くて、振動板自体が上下に9cm近くもあるので、他のヘッドホンのように振動板の中心を耳の穴に合わせるのではなく、かなり上下に変えられる。変えても音質の変化はない。そこで、ヘッドバンドを調整して上下に動かして痛くない位置を探ることができる。最適な位置に縫製できると、何時間も付けっ放しでも痛くならない。まぁ、イヤーパッドが潰れてくるくらいが最適になるはずだから、使うほどに快適さが増すと思う。

強い締め付けだが、メリットも大きい。首をいくら振ってもヘッドホンが全くずれない。これが意外に快適だ。安心感がある。また、耳にイヤーパットが当たらないので、これも快適だ。

一方、SR-L500MK2のイヤーパッドは合成皮革なので、かなり蒸れる。この蒸れはスタジオヘッドホンのMDR-CD900STも同じなんだけど、耳の周辺まで覆ってしまうSR-L500MK2の方が厳しい。夏場が怖い。素材を天然の革にした方がいいと思う。上位機種のSR-L700MK2は天然皮革なので、そちらの交換部品を使えばいいかもしれない。

SR-L500MK2は、他のダイナミックヘッドホンと違い、イヤーパッドを耳から1cm弱ほど離しても低音以外はほとんど変化しない。むしろ、ちょっと耳から離して隙間を開けた方がスピーカーに近い感じになる。イヤーパッドを改造して隙間を開けた方がいいかもしれない。

SRM-D10について

一方、静電式ヘッドホンの駆動部分であるSRM-D10をレビューしよう。STAXのヘッドホンは、真空管と同じ技術で、580Vの高電圧を振動板である薄膜に荷電して、静電気が物を引き付けたり離したりする原理で音を出している。その高電圧の発生などを行うのがドライバーと呼ばれる機器だ。STAXではトランジスター式、真空管式など様々なドライバーを作っていて、ヘッドホンと組み合わせて使う。他社からもドライバーが出ていて、その選択だけでも楽しい。
SRM-D10は携帯式のバッテリー内蔵ドライバーで、デジタル入力(USB)もできる。いわゆるDACが内蔵されていて、ハイレゾにも対応している。

SRM-D10の背面:LINE入力(ヘッドホン出力からも入力可能)、電源端子、USB入力(電源供給はできない)、入力切替しかない。

バッテリー充電時間は3時間で、デジタル入力では3.5時間稼働、アナログでは4.5時間。電源は14Vと独自。本当は12Vで動いてくれると業務用音響機器と電源を共有できてありがたいと思う。

他のSTAXドライバーと聴き比べをしたことがないので、音質の差についてはなんとも言えない。しかし、業務用の音響機器として評価するなら、スタジオ仕様のフラットな音質と同じなので、僕としては満足できる。

メーカーによれば、SRM-D10はイヤホンタイプのSR-003MK2に最適化しているようなので、近いうちに入手して使ってみたいと思っている。このSR-003MK2の前身であるSR-001を持っていたのだが、掛け心地以外は非常に素晴らしかった記憶があり、ヘッドホンタイプよりもいいかもしれない。

SR-003MK2:カナル式のイヤホン。音質にかなり期待している。ただし、仕事ではイヤホンタイプは使いにくい。仕事では付け外しの多いので、装着に一手間かかるは困るのだ。

総論としては、十分の1の価格であるソニーのプロ仕様のスタジオヘッドホンMDR-CD900ST(改良版)とかけ離れた性能とは言えないが、スタジオヘッドホンとしては仕事で使えると言える。小さな音でもフラットで高い解像力はあるので、長時間での使用にも適している。

今、映画2本の音の仕上げ作業(MA)をやっているのだが、このSTAXでいい作品に仕上がる気がしている。力強い相棒が手に入ったと言える。