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高級ヘッドホンSTAXで聴く『マンボ』

これぞSTAXで聞いてほしい楽曲。
クラシック音楽もいいんだけど、楽器が多すぎて聴きどころを見つけるのが難しい。
その点、ビッグバンド編成のマンボはわかりやすい。
金管楽器が左右に振り分けられていて、パーカッションが全体に広がっている。ドラムもわかりやすい定位にあるぞ。
ベースはエレキベースでしっかりしている。
トランペットの鋭い高音が、部屋全体に響くのが聞こえるかな?

超高級ヘッドホンSTAXで『伊勢正三 LIVE BEST ~風が聴こえる~』

DISK1は、多分、2本のギターとメインボーカルと小ラースの小さな編成。
さすがフォークソング。
コレで非常に広がりのある録音が素晴らしい。
フォークギターの優しい響がいいなぁ。
フォークソング、またブームが来るんじゃないかなぁ、来てくれるといいなぁ。

DISK2は神田共立講堂のライブで『22歳の別れ』だけど、会場の空気感がいい感じ。
アコースティックギターに軽くフランジャーがかかっているのも面白いなぁ。
77年の渋谷公会堂『なごり雪』は、定位が左にずれていて気持ち悪いなぁ。コレくらいは直してもいいのになぁ。

STAXはギターの細い弦の鳴りが気持ちいい

ライブ音源は、会場の大きさや観客のざわめきなどが聞こえてくるので、STAXの高い解像力がありがたい。

歌声用のマイクと楽器のマイクは別なわけだけど、さらに、会場用のマイクもある。楽器用マイクの音は、ミキシングで強めに入っていて、歌声はミキサーでのエコーに会場の響きが程よく混ぜてある感じ。この辺りの混ぜ具合がミキサーさんの技量なんだなぁ。

STAXでボブ・ディラン

STAXで色々聴きまくっているんだ。
1950-1970年代の録音が、結構面白い。
ステレオ録音が始まった頃かな。
1つ1つの楽器屋歌声をきちんと聞かせようとしている。

ボブ・ディラン

同じ『風に吹かれて(Blowin’ in the Wind)でも、録音が違うと聞きどころも違ってくる。このBlowin’ in the Wind(上の3番)の途中でハーモニカが入ってくるんだけど、驚く定位で登場。非常に面白い。

STAXヘッドホンと髪型について

一般的な話だが、ヘッドホンを音を聞く時にイヤーパッドが髪の毛を挟み込むと低域の音に影響が出る。
STAX(SR-L500MK2)の場合はどうだろうか? 前にも書いたが、僕はSR-L500MK2に関しては隙間がある方がスピーカーに近い空間を感じられるので、どうにか隙間を作りたい。ただ、髪の毛だとあまりよろしくない。そこで、僕は髪を刈り上げてしまった。

タバコの箱を挟んでみた

ちょっとイタズラで、発音部の下部にタバコの箱を挟んでみた。
いや、いい音だなぁ。長時間は亜たくなって耐えられないが、いい感じですな。
1cmくらい下部だけ隙間を開けているんだけど、低音はそれほど引っ込まずに、音の広がりが良くなる。まぁ、解像感はやや下がるかな。

密閉度をどこまで維持するか

メーカーとしては、高い密閉度を保って低音をしっかり聞かせたいということだと思う。事実、きっちりイヤーパッドを顔につけている時が解像感も低域も良くなる。その一方で、ヘッドホン特有の音像になる。つまり、頭の中、もしくは頭頂部方向で音がなっている感じになる。スピーカーのような音像の広がりは、ヘッドホンの仕組み上なかなか出ないのだ。まぁ、最新の立体音響の技術でバイノーラル式の音像の出し方もあるのだが、それは別の考え方になってしまう。仕組みとしては、左右の音の位相差を作り出す必要があるってことだ。また、立体音響マイクで収録するという方法もある。弊社にも立体音響マイクがあるから、それとSTAXを組み合わせてみて、どうなのかは、いずれレポートしたいと思っている。

さて、密閉度の話に戻ると、実はSTAXの大きなイヤーパッドだと、顔の形(輪郭など)が密閉度にかなり影響すると思う。顔の凹凸によって隙間が多少なりともできる。それを強いヘッドバンドで締め付けてなるべく無くそうというのがSTAXの考え方だと思う。
つまり、実は人によって密閉度に差ができてしまうことは避けられないはず。ということは、人によって聞こえ方に差が出ているということだ。ネット上のレビューを読むときも、この点には注意しなければならないと思う。特に、お店で視聴してきた程度の聞き方だと、ちゃんとした音を聞いていない可能性がある。
また、前にも書いたが、イヤーパッドが潰れてくるくらいでちょうどいい密閉度になると思っている。

最適な掛け方を探せ

STAXは耳への当て方でかなり音質が変化する。それゆえ、最善の当て方を探る必要がある。もちろん、他のヘッドホンでも当て方で差が出るのだが、イヤーパッドがそれほど大きくないので、隙間ができる心配があまりない。ところがSTAXは縦長なのでフィッチするかどうかがかなり絶妙なバランスになる。
縦型の最新版はSR-L700MK2とSR-L500MK2だが、その辺りは改良されているようだ。それでも、ほんの少しの位置決めで微妙な音を聞き分けられるかが変わってくる。まぁ、ボリュームを上げてしまえばそれほど差が出ないのだが、より高音質を求めるのであれば、掛け方に気をつけるのが一番いいということがわかった。

STAX社ヘッドホンのプロ的使い方(1)

(注意:Facebookだと改行が削除されているので、読みにくい方はリンク先のブログをお読みいただけると幸いです)

STAXのヘッドホン(SR-L500MK2)を仕事で1日10時間以上一週間使ってみたところで、最適な音で聴くためのコツがわかってきた。そのあたりをレポートしておこう。
特に、お店などで視聴する場合、耳への当て方が間違うと装着感が悪く、音質も良く聞こえないので、参考にしていただきたいと思う。

ヘッドホンの当て方が疲れに大きく影響する

まず、STAXの縦長形状のヘッドホンの耳への当て方を紹介する。特に、お店などでSTAXを視聴する場合に、今回紹介する装着方法をお試しいただくと本来の快適さや音質が体感できると思う。

STAX社のSR-L500MK2は縦型で、銀色の縦長楕円に見える部分全体が振動板だ。

SR-L500MK2などのSTAX社ヘッドホンは、耳に当てる四角い部分全体が振動板(音が出る場所)になっている。縦が10cmほどもある。
この四角い箱のような物を耳に当てるのだが、普通の丸型のヘッドホンと違って耳(耳介)を振動板の中心に来るように設置する必要がない。上の方に当てようと下の方に当てようと、音質(定位も含めて)の変化がほぼない。むしろ、顔の形によっては真ん中に来るようにヘッドバンドを調整すると締め付けが強くて痛くなる。

そこで、まずは、頭が締め付けで痛くならない位置を探るといい。僕の場合はイヤーパッドが耳介の上部に触れるくらい下げて使っている。また、耳介の裏がイヤーパッドに触れるくらい顔の前方へ出している。僕の頭蓋骨の形では、それがちょうど良い(装着疲れがない)。

装着のポイントは、大きなイヤーパッド全体が均等に頭に触れているように調整することだろう。どこか一点に強く当たらないように位置を探ると良い。つまり、イヤーパッドの高さ(上下位置)だけでなく、前後位置も探る必要がある。
最適な位置がわかると、これまでギリギリと締め付けられていたような感じがほぼなくなって、快適になる。

もうちょっとわかりやすく言うと、STAXヘッドホンは3点で支えるように調整する。1つはヘッドバンドを調整して頭頂部で軽くヘッドホンの重量を支える。次に大きなイヤーパッド全体に力が分散されるように上下・前後を調整する。ぴったり決まると10時間以上付けっ放しでも快適だ。

イヤーパッドの密閉度は気にしない

一般的には、密閉型のヘッドホンはイヤーパッドと皮膚との密着が高いほど音質が向上する。隙間があると特に低音が下がってしまう。

STAXも同じで、大きな耳のあな隙間ができると低音が下がることは事実だ。ところが、普通の密閉型ヘッドホンほどは音質が落ちない。いや、ちょっと隙間がある方が音像が広がって来る。
また、普通の密閉型ヘッドホンは、手で押し付けを強くするほど音質が上がっていくのだが、STAXはそれは、ほぼない。軽く当たっているくらいがちょうど良い音だ。ここが普通のヘッドホンと大きく違うところで、普通のヘッドホンのつもりで耳に押し付けて装着すると、締め付けが強すぎるように感じるし、なんだか迫力に欠ける音に感じるはずだ。

僕自身、箱を開封して初めて耳に当てた時には、あまりの平凡な音と頭が痛くなる締め付けにがっかりした。ところが、それは装着方法を間違っていたからだ。
ネット上のレビューでも、STAXは低音が出ないとか、迫力に欠けるなどと書かれているものを散見するが、それは装着方法に問題があると思う。

結果的に言えば、実はちょっと隙間があるくらいの方が音のバランスがいい。これは今後、イヤーパッドを自分なりに改良したいと思っているのだが、耳の穴の前方に指1本分くらいの穴(隙間)を開けると、非常に良い音像のまま低音も痩せない。前述したが、私は耳介の裏がイヤーパッドに当たるくらい前方へずれしている。すると、前方にわずかに隙間が空いて、良い感じになる。
これにはもう1つの良いことがあって、通気があることで汗で蒸れることも軽減される。

さて音に関してだが、おそらく、密閉しすぎない方が空気が抜けて薄膜の振動板が自由に動けるようになるから良い音になるのではないかと思う。この辺りはSTAX社の技術者と意見交換してみたいと思っている。玄光社から録音の書籍を出版する予定なので、その中で取材してみようと思っている。
何れにせよ、STAXのヘッドホンは、軽く当たるように装着できる位置を探るのが良い音、快適な装着感を得るポイントとなる。

イヤーパッドもエイジングが必要だ

一般的にスピーカーもヘッドホンも振動板がこなれるまでエイジングを行う。STAXのヘッドのは製造時にエイジングを行ってから出荷されているので、ユーザーがエイジングに苦労することはないし、左右の振動板のマッチング(同じ特性のもの一対を選び出す)も厳密に行ってくれている。余談だが、普通のヘッドホンはマッチングされていないものも多くて、定位が左右どちらかに偏っているものも多い。自分の耳がおかしいと思ってしまうこともあるくらいだ。しかし、STAXはそんな心配がないのもありがたい。

さて、振動板のエイジングはよく知られているが、実はイヤーパッドも使い始めは硬くてダメだ。一週間、毎日10時間以上装着してきて、やっとイヤーパッドが顔の形に馴染んできて、装着感も音質も良くなってきている。
これは業務用のヘッドホンも同じだ。真新しいイヤーパッドは、どうしても痛いし、蒸れてくる。我々ように映画撮影で一日中炎天下でもヘッドホンを装着しっぱなしだと、真新しいイヤーパッドは蒸れて困る。使い込んでヘタってきたイヤーパッドだと、蒸れないし痛くならないのだ。

つまり、イヤーパッドは潰れてくるくらいがちょうど良い。だから、お店で視聴する時にはイヤーパッドが硬くて痛く感じるかもしれないが、使うほどに柔らかくなって快適になると覚えておいてほしい。

最適な位置調整ができると低音が重厚になる

STAXのヘッドホンで最適な装着ができると、非常にバランスの良い音になる。僕らは映画などで音を設計して(どのように劇場で聞こえるかを決めて)調整している。STAXのヘッドホンは、低音から高音まで劇場と同じように聞こえる。もちろん、体の振動で感じる超低音は出ない。これはウーハーの役目だ。その超低音以外は、非常にナチュラルで素晴らしい。

ネット上の評価では低音が弱い、色気がない、などと書かれることもあるが、音を作っている立場から言えば、僕らが設計した音がそのまま聞いてもらえるヘッドホンだと言える。
つまり、低音は必要十分だし、色気なる装飾もない。

フラットな音は、耳が研ぎ澄まされないとわからない

ここで私見を述べれば、多くの人が味付けされた音に耳が慣れている。逆に言えば、低音や高音を強調しないと聞こえない耳になってしまっている。濃い味付けの料理しかおいしく感じないようなものだ。

しかし、これは耳を鍛えれば良いだけで心地よくなってくる。鍛えるといっても何かする必要はない。フラットなヘッドホン(業務用やスタジオ用)で聞き続けると、数時間で耳が敏感になって、いろいろな音が聞こえてくる。時とともに高音や低音は、良いヘッドホンを使うほどに良く聞こえてくるのだ。

ここでプロとして断言すると、STAXのヘッドホンとSRM-D10(駆動部)で迫力を感じない人は、耳がお疲れだと思う。ただ、音には好みがあって、真空管の音が好き(僕も好きだ)というような好みはあって良い。その事と、どこかの音域を強調しないといけないというのは別次元だ。
オーディオマニアの音の聴き方を否定するつもりはない。自分が心地よいというのが音の楽しみの一番重要な事だからだ。
ただ、我々プロが設計している通りの音を感じてもらえると、音の楽しみが広がると思う。特にスタジオで作り込まれた音の世界を聞いた時に、いろいろな発見ができると思う。

良いヘッドホンほど小さな音量で聞ける

STAXのヘッドのは、他の人と会話できるくらいの音量で十分に全ての音域が聞こえる。これが重要だ。ダメなヘッドホンは、音量を下げるほどに聞こえない音域が増える。そのために、全ての音域を聞くためにボリュームを高めにしがちだ。しかし、これは耳が疲れる原因になるし、耳が悪くなる。

ぜひ、STAXでボリュームを下げて聞いてほしい。音量を下げるほどに耳が研ぎ澄まされて、これまで聞こえなかったものが聞こえてくる。
耳がSTAXに慣れてきたとき、我々プロの思いが皆さんに伝わる時だと思う。

STAXヘッドホンの使用感(裏技)

(Facebookは改行が削除されてしまっているので、読みにくい方はリンク先のブログでお読みください)
STAXヘッドホン(SR-L500MK2)で色々聴いているんだ。
色々わかってきた。

JAZZはイヤーパッドを浮かせて隙間を作れ

ウッドベースがはっきりしているJAZZの生演奏を聴く時には、イヤーパッドを浮かせて隙間を広めにすると、ベース音が非常に強く明瞭になる。密閉が強いと空気圧で薄膜振動板が十分に動かないんだな。

SR-L500MK2のイヤーパッド。改良すればもっと音が良くなる。

ヘッドホンを持ち上げて完全に浮かせるくらいでちょうど良い感じだ。振動板の中心を耳の穴よりも前方(顔の正面方向)へずらすと、より低音が良くなる。これはボリュームにも関係があって、大きめに音を出しているときに、より顕著に変化する。
ただ、音源によっても感じ方が違う。というか、レコーディングでの低音の収録の仕方にも関わっていると思う。つまり、どんなマイクで録っているのか、音の編集時にどんな処理をしているのかでも違いがあるので、低音の収録状態のいい音源でないとわからないかもしれない。

イヤーパッドの改良を考えている

何れにせよ、イヤーパッドに隙間がある方が、音像の広がりも低音も良くなるので、イヤーパッドの改良をした方がいい。まぁ、使い込んでイヤーパッドがへたってくれば同じ事なのだが、仕事で使っているので、イヤーパッドは定期的に交換することになる。その都度、音質が変わられても困るわけだ。

何れにせよ、音質(周波数特性)が調整されたスタジオモニターと比較しながら、最適なイヤーパッドの調整をしていきたい。

STAXヘッドホンで執筆環境が変わった

執筆業の他に、映像制作会社を経営しているんだけど、そちらで映画の音の仕上げ用に、STAX社の馬鹿高いヘッドホンシステム(SRM-D10と SR-L500MK2)を導入した。販売価格で15万円(実際にはカードによる5%還元やメーカーのキャッシュバックなどがあって13万円で購入)という、バカバカしいヘッドホンなんだよね、

聴き疲れなのない音の世界

音に関しては、映画の音を作り上げる仕事なので、まぁ、僕はプロですね。万人にわかりやすい良い音を作るのが仕事。
そこで、今回のSTAX社のヘッドホンを仕事用に導入。まぁ、実は持続化給付金が入ったので設備投資ということね。

使い始めてほぼ一週間かな。これで2本の映画の仕上げを行なったんだ。1日に10時間以上もこれでをかけっぱなしで音を聞いている。
聴き疲ればないのが一番のポイント。そして、もちろん、音もいい。音がいいというのは難しいのだけれど、僕ら音の仕事をしている場合には、味付けされてない、原音に忠実な音を『良い音』と言っている。
そして、解像力も重要。これは大きな音が鳴っている影にある小さな音を聞き分けられるかどうか。映画では、撮影現場の色々な騒音が入ってくる。仕上げでは、それを綺麗に消す作業があって、これを行うには『良い音』のヘッドホンが必要なんだ。

一日中、音楽を聴きっぱなしも

そして、執筆作業の時には、80年代の洋楽やJAZZなどを聴いている。STAX社のヘッドホンで聴いていると、仕事(執筆)に集中することができるんだ。
今日も、WEBニュースの原稿を入稿したんだけど、このヘッドホンで音楽を聴きながらだと作業効率が非常に良い。

なぜかな? 余計な刺激(耳を刺すような音)がなく、自然な音の世界に包まれる体折ろうなぁ。

執筆する人は良い音の環境を用意すると良い

さて、改めて執筆のことを考えてみると、とにかく集中することが必要だ。テレビの音って、実は刺激的で、ぼーっと見ている人を振り向かせるために色々な技を使っている。だから、執筆中にテレビが点いていると、集中力を削がれるんだ。

なので、皆さんも執筆時の音をどうするかお考えいただくと良いと思います。

STAXの入門版:SRS-002。定価45000円

STAXはどれも高価なんだけど、入門編はSRS-002。アマゾンで39800円。これにかけ心地を向上させる密閉カバー/イヤーチップセットSTAX CES-A1も購入すると、幸せな執筆環境が訪れるはず。

STAX SRM-D10 SR-L500MK2を映画録音部がレビューしてみる(使用2日目)

新たな映像音響を考えるのに、STAXのドライバー(静電薄膜で音を出す専用のアンプ)を内蔵したSRM-D10と、STAXの中では中級になるヘッドホン(イヤースピーカー)のSR-L500MK2を買ったんだ。何が普通のヘッドホンと違うかというと、圧倒的な解像力と音源に忠実な音の再現性にある。その辺りを映画録音部の耳と経験でレビューしてみるぞ。

STAX SR-L500MK2:プロの現場で使える高い解像度とフラットな再現性。
STAX:SRM-D10 STAXのヘッドホンを駆動するドライバーとデジタル入力とアナログ入力がある。バッテリー内蔵で、出先でもSTAXの音が聴ける。ボリュームと入力切替しかないシンプrな構造だ。アルミの重厚なボディーで部品も美しい。ただし、携帯用としては巨大で重たい。

まずは視聴環境から

普段は仕事で、ソニーのMDR-CD900STというスタジオヘッドホンを改良したヘッドホンを使っている。このヘッドホンは、音楽や映画の現場で定番のもので、高い解像力と再現性を持っている。つまり、プロの音作りでは、多くの技術者やクリエーターがこのヘッドホンで音質のチェックをしている。だから、このヘッドホンで聞いた音が、プロが作った音だと言っても過言ではない。ただ、チューニングしていな状態では、スタジオスピーカーの解像力に及ばないので、僕は改良してスタジオスピーカーに近づけて使うのだ。

要するに、僕らプロの評価基準は、スタジオのモニタースピーカー(標準スピーカー)と同じように聞こえるかどうかなんだ。
心地よいとか色気があるとか、そんなことは、正直、あまり関係がない。味付けされずに、収録されている全ての音が正直に出ているかが重要だ。こういったフラットな音に慣れてくると、味付けされた音が汚く聞こえてくるんだから不思議なんだけどね。

STAXをレビューしよう

さて、今回導入したSTAXのヘッドホンだが、オーディオマニアの中でも評価が高い。ネットでも多くのレビューが上がっている。プロでは音楽系のクリエーターが使うこともある。
さて、今回は、音のプロとしてSTAXをレビューしてみたい。一般的なオーディマニアの評価とは違うかもしれない。

音のプロとして、まず感じるのは、本当に音の解像力が高いこと。そして、苦手な音域(周波数)がないということだ。つまり、音楽で言えばドラムやベースの低音域からシンバルの高音域まではっきりと聞こえてくる。僕らのような音の仕事をしている場合、こういった特性が必要になる。実は、プロの音響スタジオでは、スピーカーから出ている音が、全音域でフラットに出るように機材や部屋を調整する。そのために専用の機器で観測しているんだ。写真でモニターをキャリブレーションするのと同じだ。

そこでSTAXを前述したMDR-CD900STと比較するとどうか。実は、ほとんど変わらないというのが結論。もちろん、STAXの方が若干だが上だろう。その差は、どんなボリュームでも同じ再現性を維持していることにある。
ちなみに、一般的なヘッドホンは、低音や高音が強めに出るように作られていて、そういった味付けされたヘッドホンでは、僕らは仕事にならないのだ。

普通のヘッドホンは、音質がボリュームで変わってしまう

オーディオマニアの評価では、あまりボリュームについて語られていない気がする。実は、音響機器というのは音量によって聞こえる周波数特性が変化する。お手持ちのヘッドホンで、音量を下げていってもらうとわかると思う。低音が先に聞こえなくなっていくだろう。高音も同じように痩せていくと思う。
これは、磁力で振動板を動かすダイナミック式のヘッドホンの宿命だろう。コイルを振動させるため、小さな出力だと十分に動かないためだと思う。

ボリュームの違いで音質が変わって聞こえるのは、人間の耳にも問題がある。加齢とともに高音も低音も聞こえなくなってくる。これは宿命だ。ハイレゾと言っても、高音はそもそも加齢で聞こえないので、意味があるのか、ちょっと疑問に思う。それでも、聞こえにくい周波数帯は、ボリュームを上げて確認するという手段があって、我々は低音や高音については、音質を確認するためにボリュームを変えて自分にも聞こえるようにしている。最終的なバランスは数値で決めるようなこともある。もうちょっと言うと、自分の耳に合わせて音響機器の出力特性を変えないと、本当は正しい(原音と同じ)音に聞こえないのだ。オーディオマニアは、この辺りをどう考えているのだろう?
一方、我々は、測定器でフラットな音を作って、その音に耳を合わせる努力をしているんだ。

小さな音で聴くと性能がわかる

さて、人間の耳のことは別にして、前述のように音響機器の多くは、音質がボリュームで変化してしまうので、ヘッドホンの能力を簡単に調べるにはボリュームを下げればいい。ボリュームを下げても同じように聞こえるヘッドホンは性能がいいと判断できる。別の言い方をすると、ダイナミックレンジが広いかどうかというのと同じだ。クラシック音楽のように非常に小さな音が収録されている音源では、ボリュームを下げたのと同じで、ダメなヘッドホンは小さな音が先に消えていってしまう。

こういったダイナミックレンジは、前述のようにボリュームを下げたり上げたりした時に音質が変わるかどうかで判別できる。ここはアンプの性能にも依存してくるので難しいのだけれど、小さくしても全ての音が同じように聞こえて、ボリューム上げてうるさいくらいにしても、同じように音質が変わらないヘッドホンが優秀だと言うことだ。

STAX:はっきりとした低音と広がりのある音場

さて、STAXのSR-L500MK2だが、本当にフラットでいい解像力だ。STAXの一般的な評価では、低音があまり強くなく色気がないというようなレビューが多いように思う。
いやいや、低音もちゃんと出ている。というか、きちんと調整されたスタジオスピーカーと同じだと思っていい。ただ、スピーカーの場合では低音はウーハーから出る体全体で感じる波動があるから、それを加味すれば低音が足りないというのはもっともな話だ。しかし、それはヘッドホンで聴くなら仕方ない。それを低音を持ち上げて耳で聴かせると原音からかけ離れてしまう。

そういう意味では、STAXは非常に小さい音で聴いていても、全ての音がきちんと聞こえてくる。これは仕事をする上でも非常にありがたい。大きな音で聞き続けると耳が疲れるのだが、それがかなり回避できそうだ。

SR-L500MK2の使用感について

さて、やっとSR-L500MK2とSRM-D10の評価に移ろう。どのボリュームでも、非常にフラットで音質が変わらない。スタジオモニターと同じ音質だと言ってもいい。我々は1日に8時間はヘッドホンで聴いているのだが、そのあたりどうなのか。
SR-L500MK2は非常に重たいので、正直いうと首が疲れるかもしれない。イヤーパッドは非常に大きく、耳だけでなく周辺も全部覆う。ヘッドバンドの張力が強く、締め付けられている感じ。取り付け位置をうまく調整しないと頭が痛くなる。

SR-L500MK2のヘッドバンドの調整部分。最適な位置が見つかると長時間の使用でも痛くならない。

取り付け範囲(上下位置)は、かなり広くて、振動板自体が上下に9cm近くもあるので、他のヘッドホンのように振動板の中心を耳の穴に合わせるのではなく、かなり上下に変えられる。変えても音質の変化はない。そこで、ヘッドバンドを調整して上下に動かして痛くない位置を探ることができる。最適な位置に縫製できると、何時間も付けっ放しでも痛くならない。まぁ、イヤーパッドが潰れてくるくらいが最適になるはずだから、使うほどに快適さが増すと思う。

強い締め付けだが、メリットも大きい。首をいくら振ってもヘッドホンが全くずれない。これが意外に快適だ。安心感がある。また、耳にイヤーパットが当たらないので、これも快適だ。

一方、SR-L500MK2のイヤーパッドは合成皮革なので、かなり蒸れる。この蒸れはスタジオヘッドホンのMDR-CD900STも同じなんだけど、耳の周辺まで覆ってしまうSR-L500MK2の方が厳しい。夏場が怖い。素材を天然の革にした方がいいと思う。上位機種のSR-L700MK2は天然皮革なので、そちらの交換部品を使えばいいかもしれない。

SR-L500MK2は、他のダイナミックヘッドホンと違い、イヤーパッドを耳から1cm弱ほど離しても低音以外はほとんど変化しない。むしろ、ちょっと耳から離して隙間を開けた方がスピーカーに近い感じになる。イヤーパッドを改造して隙間を開けた方がいいかもしれない。

SRM-D10について

一方、静電式ヘッドホンの駆動部分であるSRM-D10をレビューしよう。STAXのヘッドホンは、真空管と同じ技術で、580Vの高電圧を振動板である薄膜に荷電して、静電気が物を引き付けたり離したりする原理で音を出している。その高電圧の発生などを行うのがドライバーと呼ばれる機器だ。STAXではトランジスター式、真空管式など様々なドライバーを作っていて、ヘッドホンと組み合わせて使う。他社からもドライバーが出ていて、その選択だけでも楽しい。
SRM-D10は携帯式のバッテリー内蔵ドライバーで、デジタル入力(USB)もできる。いわゆるDACが内蔵されていて、ハイレゾにも対応している。

SRM-D10の背面:LINE入力(ヘッドホン出力からも入力可能)、電源端子、USB入力(電源供給はできない)、入力切替しかない。

バッテリー充電時間は3時間で、デジタル入力では3.5時間稼働、アナログでは4.5時間。電源は14Vと独自。本当は12Vで動いてくれると業務用音響機器と電源を共有できてありがたいと思う。

他のSTAXドライバーと聴き比べをしたことがないので、音質の差についてはなんとも言えない。しかし、業務用の音響機器として評価するなら、スタジオ仕様のフラットな音質と同じなので、僕としては満足できる。

メーカーによれば、SRM-D10はイヤホンタイプのSR-003MK2に最適化しているようなので、近いうちに入手して使ってみたいと思っている。このSR-003MK2の前身であるSR-001を持っていたのだが、掛け心地以外は非常に素晴らしかった記憶があり、ヘッドホンタイプよりもいいかもしれない。

SR-003MK2:カナル式のイヤホン。音質にかなり期待している。ただし、仕事ではイヤホンタイプは使いにくい。仕事では付け外しの多いので、装着に一手間かかるは困るのだ。

総論としては、十分の1の価格であるソニーのプロ仕様のスタジオヘッドホンMDR-CD900ST(改良版)とかけ離れた性能とは言えないが、スタジオヘッドホンとしては仕事で使えると言える。小さな音でもフラットで高い解像力はあるので、長時間での使用にも適している。

今、映画2本の音の仕上げ作業(MA)をやっているのだが、このSTAXでいい作品に仕上がる気がしている。力強い相棒が手に入ったと言える。