(略)
さて、小さなシーンは書ける気がしてきましたか? いえいえ、名文を書こうというわけではなく、あなたが今朝、ベッドから這い出して、いろいろな人生の雑用をそつなくこなし、そして、今、この本を読んでいる、ここまでの出来事を順番に箇条書きにできるかどうか、それだけです。やってみましょう。
例えば、
1:日曜日、寝坊して起きたのは昼頃。
2:猫がベッドの足下に寝ている。
3:ご飯を食べるためにベッドを出たいが、猫が起きてしまいそう。
これは僕の2013年3月2日の出来事です。もし、今朝起きてから、今この瞬間まで何をしていたのか、1つも思い出せない人は作家に向いていないと思います。でも、3つ以上思い出せれば、ストーリーになります。
そして、ここがポイント。4つ目のシーンとして結末を書き添えれば、きっと面白い話になると思います。4つ目は作り話です。やってみましょう。
1:日曜日、寝坊して起きたのは昼頃。
2:猫がベッドの足下に寝ている。
3:ご飯を食べるためにベッドを出たいが、猫が起きてしまいそう。
4:ゆっくりとベッドを出ようとすると、猫が起きてしまい、うらめしそうにこちらを睨んでから、ニャーと低く鳴き、どこかに消えた。
いかがですか? 何かのドラマが始まりそうな雰囲気が出てきました。
1〜3は、今朝の出来事です。
4は、1〜3の次に起こるだろう出来事を想像してみました。もし、このような4つ目のシーンを想像できない場合、全然違う日のエピソードを書いてもいいし、映画のワンシーンをパクっても面白い(盗作ということではなく、下敷きにするということです)。
さて、小説を書く場合の醍醐味をご紹介しましょう。次の文章をお読みください。
1:日曜日、寝坊して起きたのは昼頃。
2:猫がベッドの足下に寝ている。
3:ご飯を食べるためにベッドを出たいが、猫が起きてしまいそう。
4:ゆっくりとベッドを出ようとすると、猫が起きてしまい、急に爪を出して、私の顔を引っ掻き、ニヤリと笑ったような気がした。
ちょっとホラーっぽくなってきましたね。1〜3は同じなのに、(小さな)結末を変えることで、いろいろな作風になりますね。
1:日曜日、寝坊して起きたのは昼頃。
2:猫がベッドの足下に寝ている。
3:ご飯を食べるためにベッドを出たいが、猫が起きてしまいそう。
4:ゆっくりとベッドを出ようとすると、猫が起きてしまい、「おい、こら! 急に起き上がると寒いじゃないか!」と、猫が喋った!
夏目漱石の「吾輩は猫である」っぽく、童話のような雰囲気になりました。
いかがでしょう? 3つの事実と1つの作り話、それだけでストーリーができていきます。しかも、4つ目を変えるだけで、作風を自由に作り上げることができるのです。