明治生まれの(死んじゃったけど不思議系)お婆ちゃんが持っていた純金の指輪があるんだ。金の地金をトンカチで叩いて作った指輪だと思う。輪になっているじゃなくて、短冊状の板を作ってそれを丸めてあるだけ。指に巻き付けてあるだけって感じの指輪なのさ。
『困ったら、これを売ればいい』
とは、大戦を生き抜いたお婆ちゃん。
ただ、刻印にも『2.0g』とあるように、今の時価では9000円くらいかな。
さて、この指輪をすると、僕には悪いことが起こるんだ。
だから、20年以上も仏壇に仕舞い込んでいた。それを仏壇のお掃除の時に見つけて、純金の鈍い輝きに負けて、また指にはめてしまったんだ。
すると、その晩、僕は怖い夢を見た。
僕は疲れて倒れている。今寝ている自分のベッドで、守護霊だと思われる叔父か誰かに抱えられているんだけど、そこに地縛霊のような悪霊がやってくる。
『それでは、この体は俺がもらうことにする』
というようなことを悪霊が言う。
ぼくは、そのやりとりを、ちょっと離れた所から見ている。
そして、その悪霊が僕の体の下に回り込んで、下から重なるようにして、僕の体(そして魂)と一体化するんだ。
悪霊が体に入る込む瞬間に、僕の意識は体に戻ったのか、肉体が悪霊に侵食される感覚が身体中で感じられる。
どんな感じかというと、冷え切った体を温かい床に寝そべらせて、その暖かさが体に染み込むような感覚。いや、反対かな、冷たい床に寝て、熱が奪われる感じかな。
いずれにせよ、自分の肉体が奪われる恐怖に震えるんだ。唸り声を出している自分にも気付いている。
目が覚めてからも、体が鉛のように重いんだ。毎日、重いんだ。
ちなみに、指輪は左手の人差し指にはめている。
怖いから、霊能力が強い長女に指輪を見てもらった。
『手入れが足りないのよ。お風呂に入っていないのと同じ』
と、なんだかピンボケな回答。
そこで、指輪を右手に付け替えて寝たんだ。
ところが、朝になると指輪が左手人差し指に戻っているんだ。
「お姉ちゃん(長女)によると、指輪には霊的な力は無いみたいなんだけどなぁ』
「あなたの左手が霊的なスイッチになっているんじゃないの?」
とは、ヒーラーの妻。
なるほど、人間には霊的なポイントがあって、そこに宝飾品やパワーストーンを付けると、霊的な力が倍増したり封印されたりするらしい。
そう考えると、純金の指輪がアンテナみたいになったのかもしれない。
それにしても、右手から左手へ動く指輪、不思議ですな。
もう少し、自分の体で実験してみよう。