酒を飲む酒(桜風涼)Kindle本

ひとりの女が、男の視線に入る席に座って、飲み始めた。胸元が大きく割れている、ミニスカートはタイトで八〇年代のようで、見える足は肉付きもいい。いわゆる肉感的であり、魅力的であり、挑発的であり、女っぽいのである。

なぜ彼女は外国人と話さないのだろうか、なぜ話さない…、ただ、男の前でゆっくりと酒を飲む。ワインだろう、赤く澄んだ色、酒を転がしながら口へと運び、そして色を見て、そしてまた口へ運ぶ。男にその香りが届き、だが、それがワインの香りなのか女の匂いなのか、男には判断できない。しかし、それは女の匂いだと思う方が、この孤独な店の中では、ふさわしい。男は、それをよく心得ている。

ウォッカのショットグラスが、もう空になっている。一杯、五〇〇円。滴しか残っていないショットグラスには、底に溜まったライムの酸味、この味を楽しめるうちは、まだ酔っていない。

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