前回は、吸排気管の配管の基本をバベストの仕様書から解説しました。
今回は、吸排気口の注意点です。
吸排気管の走行時対策
次にバベスト仕様書に強調されているのが、走行時の吸排気口の対策です。
大きく分けると、
1:走行時の風圧でゴミが入り込まないようにすること
2:タイヤの泥はねで、吸排気管が詰まらないようにすること
1の対策として、吸排気管を走行方向、つまり前方へ向けないこと。できれば排気管は後方へ向けること。
2としては、
・タイヤハウス内に吸排気管を出さないこと
・タイヤが跳ねた泥やゴミが吸排気管に飛び込まないような位置に設置すること
・地面からの距離を保つこと。特に路面の障害物で吸排気管が壊されることがあるので、ボディーの下に配管するときにはガードを取り付けることが推奨されています。
・吸気管のホコリ対策(フィルターの設置など)
排気管の固定
車の振動で排気管が抜けたり壊れたりしないように、排気管は必ず車体に固定すること。まぁ、これは当たり前なのですが、振動対策という面で、何も考えていない施工業者もいます。
排気管の固定は、まず、ヒーター本体でバンド固定、次に、排気管の長さに応じて数カ所で固定します。配管というのはやじろべえなので、固定した部分が支点になったテコの力が生じます。
ですから、ヒーターから出た排気管をそのすぐ近くのボディーに固定してしまうと、そこから後ろ側の配管が長くなります。たとえばヒーターから出た配管を5cmのところで固定して、その後ろ側が45cmあると、配管の終端に1kgの力が掛かるとヒーターの接続部分には9倍の9kgも力が掛かります。もちろん、終端も固定するはずですが、もし、終端がゆるんでいたり、ボディーのシナり(一瞬の歪み)があると、やはり、大きな力がヒーターの接続部分にかかることになります。
車の排気管がぶらぶらしているのは、完全に固定してしまうとエンジンと排気管の接合部が壊れちゃうからです。同じようにヒーターの排気管も、そういう設計をしないといけないのですが、なかなか難しいので、実際には配管してみて、排気管の終端を揺らしてみてヒーター本体に影響がないように、配管の固定位置を決めていきます。
一番ダメな配管は、取り付ける前に十分に排気管を曲げずに、金物でボディーに押してけるようにその場で曲げて固定してゆくやり方です。このやり方だと、常にすべての固定箇所に力が掛かっていて、故障の原因になります。
排気口の位置
実は、これもヒーターの設置において非常に重要です。
配管の失敗は、単にヒーター本体の故障を生じさせるだけで、人の命にはあまり影響しません。つまり、排気管の詰まればヒーターが止まるだけです。もしくは中身がススだらけになって効率が下がるだけです。
一方、排気口の取り付け位置を間違えると、排気ガスが車内へ入ってきてしまうので、注意が必要です。
非常に理想的なことを書けば、車(エンジン)の排気管の真横に出すのがベターです。しかし、本体の設置位置によっては、そこまで排気管を延ばせないかもしれません。
そうなると、ボディー横に顔を出すくらいに設置するのがベターとなります。
そういう施工をしている業者がほとんどなので、まぁ、どの業者も最低限の排ガス対策はわかっているのでしょう。
でも、この場合にも、先ほどの上昇する配管にならないようにしなければなりません。キャブコン(トラック改造のキャンピングカー)なら車体下がフレーム構造なので、いかようにもできますが、バンコン(ワンボックスのワゴン)だと、配管には相当な検討が必要だと思いますよ。
さらに、もう1点。排気口は下を向けろ、と書かれています。これは雨やゴミが入っても、外へ出るからです。特に泥が詰まらないように考慮せよ、と書かれています。
吸気管の位置
吸気管の開口部についても、仕様書には詳しく書かれています。ただし、排気管ほどシビアな取り回しは要求されていません。
曲げ角度の制約は排気管と同じで曲げ半径は5cm、曲げの合計角度は270度です。
注意点は、排気ガスを吸い込まないようにすることです。
ヒーターの排気ガスを吸気口が吸い込んでしまうことをショートサーキットと言いますが、2つの注意点が指摘されています。
1:吸排気口が近すぎる
2:吸気口を車体の下に設置する場合には、排気ガスが溜まりやすい場所を避ける
1の近すぎるというのは、実は難しい概念です。たとえば家庭用のFFヒーターの場合には、吸排気が1本の二重構造になった特殊な煙突を使います。壁に穴を開けて、屋外に10cmほど飛び出させるやつです。
吸気口と排気口は5cmくらいしか離れていません。それでも、排気ガスはモーターの力で一方方向へ吹き出すので、その経路と反対側に吸気口が開いているのでショートサーキットが起きません。つまり、排気口の吹き出す方向を考慮すれば、吸気口は近くにあっても大丈夫ということです。
ちなみに、ビルなどの配管では、車用のFFヒーターの何倍も出力があるヒーターでも、もし、排気と吸気の配管を平行に出すなら30cm離せば十分だとされています。
ですから、自動車用の配管も、30cm離せば十分だといえます。しかし、それには以下の注意点があります。
煙突(排気)の向かい側に遮蔽物がある場合には、最低でも遮蔽物との距離は15cm以上ないと十分な排気ガスの分散ができないとのことです。
これを自動車のFFヒーターに置き換えると、ボディーの内側真下に排気口を設置してしまうと、排気ガスが十分に拡散できないので、車内へ排気ガスが入ってきたりショートサーキットを起こします。
次章で本体の取り付けでも説明しますが、どんなに車体の気密性を高めても、実際には排気ガスが入ってきてしまいます。入ってこないようにするには、排気ガスを十分に拡散する必要があります。
もう1つの注意点として、排ガスが溜まりやすい構造の場所に吸気口を付けないことが指摘されています。
排気ガスは温かいので、車体裏側の高いところに溜まります。そこに吸気口があるとショートサーキットを起こします。ヒーターの排気ガスだけでなく車の排気ガスも風向きによっては、その部分に溜まるかもしれません。ですから、車体裏のくぼんだところに吸気口を付けるのは避けなければなりません。
あとは、排気管と同じく、ゴミやホコリを吸い込まないように、雨が入らないように開口部を下に向けるということが書かれています。フィルターの設置も効果的だとのこと。
まとめると、排気管に関しては、車体より外側に排気ガスが出るように設置。
吸気口はショートサーキットが起きないような位置に設置。排ガスが溜まりやすい車体下では注意が必要。
吸排気とも異物の混入対策を行うこと。
さらに、吸排気口が雨で水没しない場所と選ぶこと、雪道で雪にぶつかって壊れないような処置をすること、雪に埋もれない場所に設置することが求められています。
実は、ここが国内業者はあまり考えていないみたいなんだよなぁ。