三島由紀夫の『青の時代』を読み始めたんだ。
52歳にもなって、今更、三島なのだけれど。
『青の時代』と木更津高校
先日、大学の後輩で専門書籍の編集者とお茶をしていた時のこと、桜風さんは木更津高校出身ですよね、という話になった。
編集者君は、ぼくより17歳ほど年下の、まだまだバリバリかつ、県立千葉高校の出身者。つまり、非常に頭の良い、そして受験勉強の猛者でもある。 さすがにあらゆる書物に精通していて、非常に勉強になる。
彼が、木更津高校と言えば「三島由紀夫の青の時代」だという。
いやらしい話だが、木更津高校とは、旧制中学からある学校なので有名人は多い。存命では、中尾彬さんや千葉真一さん。連合赤軍のメンバーも居れば、オウムの浅原の奥さんの石井知子という人は、ぼくの2つ上の先輩であり、まぁ顔は知らないけれども同じ時期に高校に通っていた。 オウム事件の時に、その奥さんの実家へ取材に行った際には、高校名を出すと、小学校教師だったご両親が家に入れてくれて、取材に応じてくれた。 ある意味、木更津高校(木更津一高)というのは、地元での絶対的な信頼のある学校なのだ。
その木更津高校が、「青の時代」の主人公が通う高校であり、上記のような雰囲気がそのまま小説になっている。
主人公の誠について
木更津市に生まれた主人公・誠が、医者の親父に反発しつつ、旧制一高(現在の東大)に合格して、戦後に東京大学に改名されて勉強を再会するのだが、彼が学んだのが法学部であり、さらに専攻は刑法学、小説の中では死刑論などが展開される。
さてはて、バカバカしい読者の感情移入なのだが、小生はここにビビっと来てしまった。
なぜなら、小生は東大ではないが慶應で法学部法律学科、しかも刑事法を専攻していて、未だにFacebookでは法律論をバカバカしく叫び続けていて、その内容が、この小説の主人公が叫んでいるのとほとんど一緒なのだ。
それだけではない、主人公・誠の母の名は「たつ子」。
これまた、何の偶然か、小生の母親も「たつ子」である。
という偶然の一致が、木更津高校出身・法学部の刑事法専攻(しかも、思想も一致する)、そして母の名が同じ。
言いたいのは、人生は偶然、向こうから必要な物がやってくる
さて、言いたいのは、小生の馬鹿読者っぷりの話ではない。
人生は、必要なことが自動的に、必要な時期にやってくるということだ。
三島由紀夫に関して言えば、市ヶ谷駐屯地で割腹自殺をしたときに小生は子供で、ニュースでそれを聞いても、なんとも感想すらない感じだった。
大人になり、週刊誌の記者や様々な雑誌のライターをしていて、芸能界にもどっぷりになった。
新宿2丁目の芸能界の重鎮の店に入り浸っていた時に、故・竹邑類先生(舞踏家・舞台演出家・芸能界ではピータと呼ばれていた)に非常に仲良くしてもらっていて、彼を僕のハーレーの後ろに乗せてツーリングに出かけるくらい仲が良かった。 「ねえねえ、ナベ(小生のあだ名)、私ね、貴方のために、映画のプロットを書いてきたの」
と、当時、僕が製作していた映画の筋書きをA4に10枚も書いてきてくれた。
竹邑先生を乗せて、プロットの舞台となる九十九里へ出かけて、シナリオハンティングもした。
竹邑先生は、三島由紀夫がぞっこんだった美少年
さて、なぜ竹邑先生のことを思い出したかというと、三島由紀夫の『美少年』という小説があって、その主人公が「ピータ」である。都会の夜の遊びを描いた作品なのだが、この小説は、二丁目では有名な話で、そう、ゲイ小説なのだ。 そして、もう、お分かりのように、主人公は竹邑先生その人であり、この小説は、三島由紀夫が竹邑先生(当時二十歳)に向けて書いたラブレターなのだ。 「ねえねえ、ピータ。僕ね、君のこと小説に書いたんだ」
と、当時の2丁目で三島由紀夫が竹邑先生を口説いていたと、当時を知っているお姉さんたちが、小生にいつも話していた。
ところが、竹邑先生は三島に全然興味がなくて、軟弱な感じだったわよね、と笑っていた。
竹邑先生のご自宅は高樹町にあって、なんどかお邪魔したことがある。その三島に口説かれていた時代の写真を竹邑先生は僕に見せるのだけれど、確かに美少年だ。しかも、舞踏家でスタイルも抜群、当時のファッション誌の表紙にもなっていた。
三島由紀夫の印象は、竹邑先生を追いかけるおっさん
ということで、小生の中での三島由紀夫は、『音楽』という精神医の話の著者くらいで、ドナルドキーンさんが褒めちぎっている凄い作家という印象はない。 そして、2丁目の噂と竹邑先生が、鼻で笑うゲイのおっさんという印象が加わった位だ。
余談だが、美輪明宏さんが三島由紀夫と付き合っていたと豪語しているが、2丁目ではそれを鼻で笑うお姉さん方が多い。竹邑先生にしても、 「あら、当時、三輪さんなんて三島さんの周りで見たことある? 確かに舞台はやっていたみたいだけど、あれはお仕事だったもんねぇ」 と
「当時の三島さんは、忙しくて三輪さんとデートする時間なんてなかったんじゃないかしら?」
「死人に口なしね、怖いわぁ」
と、皆さん、笑っている。
青の時代の三島由紀夫
さて、そういう印象の三島由紀夫なのだが、この「青の時代」を、今、3分の1ほど読んだ。ご本人とはまったく面識もないし、正直、興味もなかったのだが、この作品の存在から、急に身近になってしまった。 さらに、竹邑先生の命日も近い。
まぁ、運命とはこんなものなのかもしれない。
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