カルロスゴーン容疑者が、10億円で保釈になる。
経営者仲間と話をしていると、日産を立て直したのだから、高額報酬は当たり前で特別背任は悪いにせよ、検察(日本)はやりすぎではないかという意見が多い。
しかし、僕は、報酬は極端に高いし、日産を担保に財テクをしているのは、悪質な特別背任であって、まともな経営者とは思えない。
そこで、そんな感情論を外して、客観的事実だけでカルロス容疑者について分析してみる。
日産の立て直しの引き金だが原動力じゃない
まず、日産を立て直したという点に、僕は大いに疑問がある。
その根拠は、
1:日産が必要としていたのは、キャッシュフローだった。
バブルの時代の日産の経営を覚えているだろうか?
本業の利益はほとんどなく、資産の多くを財テクに回し、まるで株屋のような経営だった。純利益の8割以上が資産運用で、車を作って売る気持ちがない状態だった。
そしてバブルが崩壊して、財務状況が悪化したわけだ。日産のダメなところは、この本業を疎かにして、バブルで資産が悪化したことだ。
2:日産は、旧経営陣を排除しなければならなかっただけ
日本でも有数な巨大企業で、大企業病にかかっているわけで、ダメな経営者でも内部では下ろすことが難しい。カルロス容疑者は、そういったしがらみなく、筆頭株主側として、旧経営陣を切った。それが大きいと考える。
3:カルロスゴーン容疑者が本当に優れているなら、本家のルノーが世界トップにもっと迫れるはず
ここが最も重要なポイントで、もし、カルロスゴーン容疑者が本当に優れた経営者であるなら、本家のルノーが日産よりも高収益になるはずだ。しかし、実際には日産の寄生虫のような経営になっている。
日産は、もともと技術力も開発力もあって、そこに資金が乗って再建しただけだ
上の分析を総合すると、ゴーン氏がやったことは、1:単に資金を持って来た、2:しがらみなく(失敗して来た)旧経営陣を切った、という2つの功績があるだけにしか見えない。
日産が復活したのは、元々あった技術力と開発力に資金が乗っただけだ。
もし、本当にカルロスゴーン容疑者が優れているなら、本家のルノーを世界一に押し上げることもできただろう。しかし、ルノーは潰れていないだけで、収益のほとんどは日産からの上納金。こんなものは経営でもなんでもない。むしろ、ルノー側は、経営能力なしで、資金運用の株屋組織だと言った方がいい。
ひどい特別背任罪である、むしろマネーロンダリングを疑いたい
さて、検察庁が指摘しているように、カルロスゴーン容疑者は、日産の社員の生活を担保に、自分の資産の保全をやり、それを隠して、さらに、法外な報酬を裏で約束させていた。
この裏で約束させている、というのが非常に怪しい。つまり、訴追せずに放置すれば、おそらく誰にも知られずに多額の現金が日本から消えて、どこかに行ってしまった筈だ。
もうちょっと裏読みすると、これまでも有価証券報告書に記載しない形の金融資産が動いている(自己資産の保全担保も資金の動きということ)。これを普通は『マネーロンダリング』と呼ぶ。
つまり、カルロスゴーン容疑者の闇は、もっと深いと考える。