ノーベル文学賞を受賞しているカズオ・イシグロの作品を2つ読破した。正確には、オーディオブックで全部聞いたんだけどね。
1つは『忘れられた巨人」。
もう1つは『日の名残』。
先が読めない構成の素晴らしさ
どちらの作品も、時がゆっくりと流れて行く。
娯楽作品にありがちな刺激たっぷりの高速テンポって作品じゃない。
まるで、山に降った雨がたくさんのしずくになって、それが小川に、清流に、そして大河になって海に届く。
そんな感じに、細いエピソードがどんどん寄り集まって太くなって、最終の文章まで続く。
そして、どちらの作品もイギリスというものを描いている。
「日の名残」は、ノーベル賞の元になった作品なんだろう。イギリスの名家に雇われる執事の独白なんだけど、まぁ、これでもかというくらいイギリス人とは何かを押してくる。 舞台は1930年代なんだけど、強く現代社会を風刺している感じもすごい。
「忘れられた巨人」は、まぁ、エンターテインメントな感じなんだけど、先が読めないどんでん返しの連続って作品だ。
そして、つねに「なぜ?」が付きまとって、それが、先ほどの「日の名残」と同じように、なぜが寄り集まって、どんどん太くなっていく。 すごい小説って、こういう構成のすごさがあるんだな。
50歳を超えて、やっと文学が面白くなってきた。
今までは、正直言って、例えば太宰治にしても夏目漱石にしても、どうでもいい悩みの羅列で、そんなこと乾布摩擦すりゃ気分も晴れるってもんだ、って感じに思っていた。
カズオ・イシグロにしても、マルキ・ド・サドにしても、悩みとは別次元の人間性がテーマになっていて、それは哲学や宗教に近いんだなぁ。
と54歳のおっさんは、青いことを口にしてみたぞ。
なるほどなぁ、風土と歴史と人間性を織り込むって、こういうことなんだなぁ。
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