樹齢70年以上の杉の大木が、僕に向かって倒れてきた!

桜風さんです。
昨日は君津市の山奥にある樹齢70年オーバーの杉の大木を伐採する様子を撮影したんだ。

伝統建築で家を建てるんだ。
もうすぐ70歳になる、ちょー元気な棟梁が作るんだ。
施主さんと、山の持ち主と、職人さんたちと山へ行って、木を選んで、伐採するんだ。

ロープを高いところに引っ掛けて、それをみんな引いて、根元は棟梁がチェーンソーで切る。

倒れる方向は、事前に見極めて、ロープでその方向へ引っ張るんだよ。

僕はカメラを担いで、いろいろなシーンを撮るんだけど、最終的には木が倒れてくる側で、迫力ある映像を狙ったんだ。

でも、ちょいと間に合わなくて、木が先に倒れてきた。
施主さんや職人さんの悲鳴が聞こえてくる。
ぼくはカメラの準備をしている。
総重量は1トンを超えるだろう巨木が、叫ぶように音を立てながら倒れてくるんだ。

でも、僕は全然怖くなかったんだ。
巨木と目があったような木がする。
ぼくはもうちょっと待っててくれって言ったのに、巨木は申し訳なさそうに倒れてくる。
でも、それは優しい倒れ方なんだ。
みんなにはそれが分からなかったみたいだけど、ぼくは巨木が自分の命を人間に任せたような心持ちで、安らかに倒れてくるのを感じていたんだ。

ぼくのほぼ真上に枝いっぱいの杉が倒れて来るんだ。
近くのナラの木をなぎ倒して、枝や葉が爆破されたように周囲に飛び広がりながら、バリバリと音を立てて降ってくる。

ぼくは、それでもぜんぜん怖くないんだ。
目の前のナラの木は、大枝が半分折れている。

ぼくは、ゆっくり2歩だけ右に、そう、ゆっくり歩いた。
そして、ぼくの左側に、杉の巨木が寝そべるように、横たわった。
横たわった後から、枝葉がふわふわと、雪のように降った。

みんなが、桜風さん、だいじょ〜ぶ〜?
と叫んでいるけど、ぼくは巨木と、何か会話していたと思う。

この巨木は、大黒柱になるんだ。
出来上がる家には、鍼灸師のご夫婦が住む。
システムキッチは入れず、土間とかまど、居間には囲炉裏が拵えられる。
それをこの巨木は100年以上守ってくれるはずなんだ。

巨木は、ゆっくりと死んでいくだろうなぁ。
切り倒されてすぐに死ぬわけじゃない。
ゆっくり乾燥しながら、眠っていくんだ。
眠りながら死と同一化するんだ。